
2025.03.24
地域課題を資源に変える 牡蠣殻を活かす循環型社会が子どもたちへの学びの場に
ー「地域の課題をただの問題としてではなく、新しい価値へと変えていきたいです。」 穏やかな口調でありな…
2025.3.31
ー「プラスチックを抱える企業と、それを再生素材として活用したい企業の橋渡しをして、課題の解決に取り組んでいます。」
そう語るのは、株式会社リマーレ(以下、リマーレ)代表の間瀬社長です。焼却されてしまうプラスチックの再生に挑み、リサイクルから新たな価値を生み出しているリマーレの取り組みの今。現在の事業やチームづくりの考え方、鳥羽市での展開、そして今後のビジョンについてお伺いしました。
ー間瀬社長「創業当初に比べると、事業計画が大きく変わりましたね。営業戦略も変わっています。」
創業から4期目を迎えたリマーレは、取引者数が前期比で4倍に。「地球のプラスチック資源循環の最適化」に向けて、再資源化市場のリーディングカンパニーになることを掲げて邁進しています。
ー間瀬社長「これまで焼却されていた複合プラスチックを、建設業界の内装建材として使えるようにする。これが、いま僕たちが力を入れて取り組んでいることです。」
企業が排出するプラスチック廃棄物を回収し、それを再生素材として活用することで、Scope3におけるGHG(温室効果ガス)削減にも貢献できます。リマーレではScope3削減に取り組みたい企業の課題解決サービスを提供しています。
GHG(温室効果ガス)は、どこから排出しているかによって、以下の3つに分類されます。
区分 | 説明 | 例 |
Scope1 | 企業が自分で直接出す排出 | 自社の工場や車両からの排出 |
Scope2 | 他社から買ったエネルギーによる排出 | 電力会社から買った電気を使うことで間接的に発生 |
Scope3 | 自社以外のバリューチェーン全体の排出 | 原材料の製造、製品の使用・廃棄、通勤や出張など |
Scope3は、自社だけでなく取引先や消費者も関わる「間接的な排出」すべてを含みます。そのため最も範囲が広く、対策が難しいことが大きな課題となっています。
企業は、Scope3を念頭においた脱炭素を目指すことを日本政府から求められています。その背景には、多くの企業で抱えるGHG全体の排出量はScope3で70〜90%を占めると言われていることにあります。
Scope3のGHG削減のためには、「何をどれだけ排出しているか」を把握した上で、バリューチェーン全体で協力して改善していくことが重要です。Scope3の主な排出カテゴリーは15分類あり、リマーレでは
・カテゴリー5:事業から出る廃棄物 廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送、処理
・カテゴリー12:販売した製品の廃棄 使用者による製品の廃棄時の輸送、処理
の削減を可能にしています。
参照元:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「01 サプライチェーン排出量算定について」
間瀬社長によると、リマーレが提供する事業サービスには主に3つの需要があるといいます。
1.GHG(温室効果ガス)の排出義務化
2.サーキュラーエコノミー(循環経済)の要件
3.産廃費用の削減
です。
ー間瀬社長「企業がどのように資源循環を考えているかを問われる時代。僕たちは、その答えをデザインしています。」
リマーレは、「REMARE CREATIVE STUDIO」と「REMARE Plastic SUMMIT」と名付けたデザイナーコンソーシアムを立ち上げました。
ー間瀬社長「デザイナーたちと協力しています。リマーレは素材を作り、デザイナーたちがデザインを考えて、形に落とし込む。素材開発からデザイン、製品化、さらにはブランディングまで、一貫したサポート体制を築いています。」
クリエイティブなチームが協業することで、リマーレはプラスチックの課題を抱える企業と共に考え、伴走しながら、最適な解決策へと導くサービスの提供を実現しています。
ー間瀬社長「日本は資源がないと言われますが、元素という視点で見れば資源大国だと思うんです。炭素(C)、水素(H)、酸素(O)ー素材を元素記号から考え、新しいものづくりをデザインする。これが僕の思想です。」
間瀬社長は、サーキュラーエコノミー(循環経済)の概念を「思想」として捉えることで、それを形にするためのプロジェクトを展開しています。
ー間瀬社長「面白いから、という理由だけで仲間が集まってくれるんです。」
間瀬社長は、自ら都内等でイベントを企画し、共感した人々とつながりを持つことで、クリエイターや企業とのネットワークを築いてきました。
ー間瀬社長「事業を一緒にやりましょう、じゃなくて、『こういうことを考えています』という思想を色や形にして、それに共感した人たちと仕事を作っています。」
事業計画を立てる前に、まずは思想を共有すること。そんなリマーレの思想に共鳴した人の輪が広がりを見せて、次々と新たなプロジェクトが生み出されている現在に繋がっています。
ー間瀬社長「2025年3月18日に、ようやく念願の機械を導入できました。漁具を粉砕・洗浄・ペレット化できる設備が鳥羽で稼働します。」
新たに導入された機械は、もともと樹脂のリサイクルに使われていたラインを漁具専用に再設計し、試行錯誤を重ねて完成させたものです。これにより、創業当初から取り組んできた漁具廃棄の課題に対応できる体制が整いました。地域に眠る「海の廃材」を再び素材として活用し、循環させていく仕組みづくりの可能性がさらに広がります。
ー間瀬社長「鳥羽市は観光の街です。観光に関われるのであれば、旅館とホテルをインスタレーション(空間全体を作品として表現する現代美術の表現手法)で旅の目的地になるような仕掛けをしたいですね。」
例えば、様々なアーティストが各旅館の玄関という空間で、使用済みの漁具を再生したマテリアル「GYOG」の作品を作ることができたならば、鳥羽市全体を盛り上げることができます。
ー間瀬社長「実際に廃棄プラスチックをプロダクトにしてみて思ったのは、まだまだ弱いということ。例えばボールペンを作ったら、誰が見てもボールペンだとわかりますよね。それに対して、空間って人それぞれで感じ方が違うんです。そこが面白いと思うんですよ。」
間瀬社長が大切にしているのは、体験という価値をいかに生み出すかという視点です。モノに具体化しすぎてしまうと、人それぞれの感じ方や想像力が制限され、会話や気づきの余白が失われてしまう。だからこそ、インスタレーションのような空間表現に可能性を見出しています。
ー間瀬社長「空間の中に身を置いたときに、『これなんか面白いね』って感じる人もいれば、『そうかな?』って思う人もいる。そうやって生まれる会話や、そこで交わされる気持ちが体験になると思うんです。そういう体験を街としてデザインしていくには、具体的なモノじゃなくて空間に意味を込めていくのがいい。」
鳥羽には多くの旅館やホテルがあります。それぞれの宿泊施設が目的地になるような魅力を持ち、旅人が施設を巡ることで、街を巡りながらサステナブルを体感する。そんな人の流れをデザインすることで、新たな地域の価値が生まれるビジョンを間瀬社長は思い描いています。
ー間瀬社長「今回はかめやさんに泊まったけれど、次は扇芳閣さんのインスタレーションを見に行こうよ、みたいな。そういう旅のかたちが面白いですよね。」
機械の導入に伴い、リマーレでは2025年5月頃から、BtoB向けのサステナブルワークショップが本格的に始動します。一次から三次産業まで、全工程を体感できるプログラムとして展開を予定しています。
ー間瀬社長「新規事業を作りたい企業さんは多いですが、一次産業や二次産業に触れる機会は少ない現状があります。だからこそ、鳥羽市の漁師さんとの交流から、実際に廃棄プラスチックを粉砕・再生する体験を提供していきます。」
ー間瀬社長「リマーレの目標は、廃プラスチックを入れたら板材が出てくる全自動プラントを開発することです。まずは2026年に岐阜県で試験稼働を予定していまして、2027年には全国展開、2028年には東南アジアへの進出を計画しています。」
人の手を介さずにリサイクルの工程が完結する「全自動リサイクルプラント」の実現によって、国内外での持続可能な資源循環に貢献することが期待されます。
ー間瀬社長「そして、木材や石材の代替材として、再生プラスチックが普通に使われる社会を目指していきます。」
建材や家具など、日常にある当たり前の素材として再生プラスチックを浸透させることで、資源循環経済はさらに加速します。そんな未来の実現に向けて、リマーレでは技術開発と市場創出の両輪を回し続けています。
単なるリサイクル企業ではなく、「地球のプラスチック資源循環の最適化」をビジョンに掲げるリマーレ。間瀬社長の思想に共感した仲間とともに、鳥羽市から地域資源の循環プロジェクトを展開し、持続可能な未来に向けてグローバルに挑戦を続けています。
●株式会社REMARE
〒517-0011 三重県鳥羽市鳥羽5-2-14
公式サイト:https://remare.jp/