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2024.7.11
地域課題に寄り添うツアーはどうやって作るのか、お客様も参加できるサステナブルツアーとは?
鳥羽市の中心市街地にあるエコツアー会社「海島遊民くらぶ」は2001年から地域ならではの文化や生活(地域資源)をお客様に伝えるツアーを展開しています。海島遊民くらぶの目指すツアーは、お客様、自然、住民・他の産業、自分たち観光事業者の4者にやさしいツアーです。2001年ツアー会社設立当時は、まだ発地側で観光商品が作られるのが一般的な時代でしたが、地域発・地域密着型で、離島に住む人や海女、漁師と良好な関係を築かないと作れない、地域文化に深く入り込んだコンテンツを作ることで、お客様が感動する魅力的な体験を創出しています。
代表の江崎貴久さんは、老舗旅館に生まれましたが、エコツアー会社のほか、地域課題に取り組むため漁業経済の博士号を取得した地域愛溢れる方です。地域の持続可能性に真剣に取り組む姿勢をお聞きしました。
海島遊民くらぶ((有)オズ代表取締役)江崎貴久さんインタビュー
当社では、「地方においてのツアーはお客様にだけ付加価値があっても意味がない」と思い、お客様、自然、住民・他の産業、自分たち観光事業者の4者にやさしい観光としてエコツーリズムに取り組み、ツアーにお客様を迎えてきました。
近年、気候変動による環境変化や一次産業への影響が目に見えるようになり、SDGsという言葉の認知が高まったことで、世界中で持続可能な観光のあり方が注目され、GSTC(グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会)でも観光関係者だけでなく、地元住民との連携の重要性が強く発信されています。
多くの企業でSDGsや持続可能な観光への取り組みが進み始めている中、私たちは、次のステップとして「ローカルインパクト」を2つに分け、地域や自然への負荷を0にする「0インパクト」と地域や自然保護に貢献する「ポジティブインパクト」に取り組む経営体制を目指しています。
「0インパクト」は、事業を行うことで環境に負荷をかけないツアーを実施することで、ゴミを増やさない、水を汚さない、地域コミュニティを壊さないなど、誰もが共通認識を持つ目標と活動です。「ポジティブインパクト」は地域課題によって取り組む内容が異なる取り組みです。
ポジティブインパクトとは
例えば、「アカモク」という海藻について、鳥羽市内でも漁業者の取り扱いは異なります。牡蠣養殖が盛んな鳥羽市浦村町では、近年の養殖カキの大量へい死を受け、新たな水産資源として「アカモク」を収穫し販売することにしました。一方鳥羽市答志島では、魚を獲る漁業が盛んであることから、「アカモク」は産卵場所、小魚の避難場所として重要であるとし、アカモクは獲らないことを決めました。それぞれの漁村文化や漁業者の持続可能性に向けた判断として、両方とも正しい選択です。「なぜ、その選択をしたのか」を解き明かし、理解することが経済の本質であり、持続可能な無形観光資源ともなります。
私たちガイド(インタープリター)が、ツアーの中でその背景や選択の理由をお客様に伝えることで、お客様は面白いと感じ感動してくれます。
さらに、浦村の「アカモク」加工品や答志島の自主的に資源管理された魚をお客様におすすめすることでポジティブなインパクトを生んでいきたいと考えています。
鳥羽に来て何を食べるべきか、食べてほしいものを紹介
今、いろんな水産資源が急激に少なくなっています。でも、逆に増えている魚種もあるんです。例えば、サワラや鯛、アイゴやムラサキウニなど、増えている生き物もいます。サワラや鯛は、一般に知られていてすぐにブランド化や消費拡大が可能ですが、アイゴやムラサキウニは知られていない上に、たまたま海藻を食べる生き物というだけでマイナスイメージとともに伝えられてしまい、消費への転換が難しくなっています。減少している海藻を食べるから悪者扱いされるのなら、さらに激減しているアワビを食べる私たち人間も悪者となってしまいます。それよりも、環境の変化によって食材を変化させる私たちの食文化の柔軟性を忘れてしまわないようにすることが重要です。今はお客様に提供していない食材でも、地元にいれば多かれ少なかれ、食べてきた食材です。自然に合わせて、今獲れるもののおいしさを再発見し、ちゃんとストーリーとつなげてお客様にも食べていただく、そんな取り組みをしていきたいです。
江崎貴久さんのヒストリー
・鳥羽の旅館の娘として育つ。
・鳥羽に帰ってきて旅館の女将として働く中、体験にお客様が感動するのを見てアクティビティ会社を設立。
・お客様を地域に連れていく中で地域課題が見えてくる。
・地域、行政など様々な人とのつながりの中、深く学びたいと考え三重大学大学院に社会人学生として入学。2023年三重大大学院生物資源学研究科で博士号を取得。
・伊勢志摩国立公園エコツーリズム推進協議会会長、鳥羽磯部漁業協同組合アドバイザー、鳥羽市観光協会副会長、NPO法人日本エコツーリズム協会運営委員、環境省中央環境審議会専門委員、地域づくり団体全国協議会幹事など様々な分野で活動し、漁業と観光の連携を自身のテーマとして、地域振興に深く携わる。
海島遊民くらぶ (有限会社オズ)
〒517-0011 三重県鳥羽市鳥羽1丁目4−53 0599-28-0001